酒と趣味と自堕落な日々

お酒と同人ライフと趣味の世界に浸って、自堕落に過ごす「いとうみき」の日々の日記

2007/05/28

おかしくないかい、JASRACと東京地裁

5/25に東京地裁で下った判決は、国内でのインターネットのオンラインストレージに関わる事業者に、少なからず衝撃を与えた。判決文を読んだが、素人にはわかりにくい言葉がならんでいるので、解読するのに苦労したけれど、わずか三日にしてPDF形式で文書が公開されているのはすごい事だと思う。ただし、文中にある概念図や説明図が、別紙として提供されているのは問題だが。おかげで、全体像の把握は正確さを欠いているように思う。この訴訟は、まぁ簡単に言ってしまえば、MYUTAと言うサービスが提供されようとしていて、これはユーザ側PCで携帯電話用の音楽データに変換し、ストレージサービスとしてのサーバに保存、携帯電話にいつでもダウンロードできる様にしようというものだった。当然、JASRACは面白くない。当たり前だ、CDの売り上げが落ちている現状で、伸びている着うたやiTS等のサービスからダウンロード毎に課金を徴収している訳だから、ダウンロードが減る事を認める訳が無いのだ。と言う訳で、サービスの停止を要求したのだが、MYUTA側も黙ってはいない。サービス停止を要求する権利等無いとして、訴えた訳だ。結果はMYUTA側の敗訴。で、重要なのは、東京地裁の判断にある。争点となったのは、元データの複製権と自動公衆送信権で、ストレージサービス事業社とって重要なのは後者である。公衆とは『不特定の者又は特定多数の者をいうものであるところ(著作権法2条5項参照)』であって、PCや携帯電話のアクセスを正規ID、パスワード、隠しID、さらには携帯電話の電話番号まで使ってPCと携帯電話を結びつけていても、ユーザとは『本件サーバを設置する原告にとって不特定の者というべきである。』なのだそうだ。つまり、サービスを提供している側からすれば、いかなる方法であっても、アクセスして来るユーザーを特定できないという事になり、結果として、オンラインストレージサービスはすべて『自動公衆送信のための装置に該当』してしまう。んじゃ、ユーザ登録なんかは無意味なのかって事にもなる。ここに音楽を保存しておくと、『公衆たるユーザからの求めに応じ,ユーザによって直接受信されることを目的として自動的に行われるもの』と見なされる訳で、JASRACによる承認と課金徴収が発生するという訳だ。という訳で、オンラインストレージサービスを提供している事業者は、ユーザによるアップロード毎にお伺いを立てなくてはならなくなり、まともな課金状況ではやって行けない状態に追い込まれかねない。JASRACの処理能力にしたって、ほぼリアルタイムで判断できるとはとても思えない。多分、文面からすると、P2Pのデータ共有まで視野に入れているのかもしれず、また、データを音楽に限定している訳ではないので、かなり広範囲に適用されそうな気配がある訳だ。パソコンをちょっとかじった程度のユーザが見ても、MYUTAのサービスは技術的にかなり厳密に個人が特定できると思われるのだが、東京地裁とJASRACではそう考えてはいないらしい。では、彼らに聞いてみたいのだが、「公衆でないユーザを特定する方法とは、具体的にどういう事なのだ?」。これが厳密に定義されるのであれば、オンラインストレージは続行可能だと思うのだが。ちなみに、赤字は判決文から「引用」させてもらった部分だ。

参照:著作権侵害差止請求権不存在確認請求事件
参照:ネット上にデータを保存するサービスはすべて著作権侵害で違法
参照:ネット上にデータを保存するサービスはすべて著作権侵害で違法です
参照:音楽保存サービス:ストレージ利用は著作権侵害 東京地裁
参照:JASRAC「東京地裁が「MYUTA」運営会社の請求を棄却」

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